2004年7月17日

 ホテルのロビーでイーさんと待ち合わせる。今日は丸一日空いているので、ゆっくりと観光できるはずだ。イーさん運転の車でプープラバート歴史公園へ向かう。今回ウドンタニで見る予定の場所はウドンタニから離れているところが多く、移動に割と時間がかかる。

  「今度来る時は国際免許を取ってきて下さい。そうすれば車を
   貸すので、あとは自分の好きなところをまわれますよ」

イーさんはそう言うが、果たして道路表式も読めない外国人が無事目的地にたどり着ける可能性はゼロに近い。せいぜい街中をぐるぐる周るぐらいじゃないか。まあ、街中を周るだけでも、普段目にしない光景にであえるので、それはそれでいいかもしれない。でもまあ、今回はイーさんにおまかせするしかないので、助手席で「イーさんってイサーン(ウドンタニの街がある東北地方の呼び名)に似てるね」 と面白くもないギャグを飛ばしたり、イーさんにタイ語の発音を教わったりしながら移動時間を過ごした。
 余談だが、やはり発音は現地の人に教わるのが一番正確だ。いつもはネットで文字中心で教わっているので、発音まではなかなか難しい。以前にネットで教えてももらった単語を本人の前で使ってみて、発音が全然違う、と指摘されたことが何度かあった。ただ、せっかくいくつかの単語の発音を教えてもらったが、メモをきちんととっていないので、かなりの部分忘れてしまっているのは、イーさんには内緒だ。
 最初の目的地、プープラバート歴史公園は、ウドンタニとノーンカーイのちょうど中間地点にあった。入り口で入園料を払う。昨日のバンチアンもそうだったが、僕はタイ人価格のチケットを購入した。

  「だってあなたはタイ人に見えますから」

イーさんが笑っている。そうなのか?昨日のバンチアンはまだしも、ここではチケット買うときに少ししゃべってるぞ?まあ、結果的に得したのでこれ以上はとやかく言うまい。
 公園はとても広いが、歩き回るにはあまりに暑かったため、全部は周らなかった。公園には小学生ぐらいの子供達も見学に来ていた。彼らは熱心に石の説明をノートに写している。私には理解不能のタイ文字が彼らには読める、あたりまえの事だが、不思議な事だ。
 車でさらに北上し、ノーンカーイにあるワット・ヒン・マーク・ペンに向かった。とても静かな寺だ。訪れた時間帯のせいかもしれないが、なかですれ違ったのはお坊さん一人だけ。ゆっくり祈りをささげるにはちょうどいい。旅の安全と、この際だからいろいろと祈っておいた。


ノーンカーイ駅

 さらにメコン川に沿って進み、ラオスとの友好橋が見える食堂で昼食をとる事にした。ここでは、メコン川だけで取れるジャイアントキャットフィッシュを食べる事ができる。前に本でこの魚の事を読んだ事があって、実はすごく楽しみだった。次々と料理がテーブルに運ばれてくるが、肝心のジャイアントキャットフィッシュのトムヤムはなかなか出てこない。イーさんに他の料理のタイ風の食べ方を教わりながら待っていると、ようやくそれは運ばれてきた。大きな切り身が所々に見える。これがジャイアントキャットフィッシュか!さっそく口に運んでみると、サクサクコリコリ、なかなか変わっていて面白い歯ごたえだ。トムヤムの酸っぱいスープは魚によく合う。ここでしか取れないというレアさもあいまってもしこの地を訪れる事があればぜひ食べたい一品だ。


食事をした食堂

   ラオスとの国境にかかる友好橋に向かった。簡単にラオスに入国できるということだったので、イミグレの職員に早速聞いてみると、結果は「NO」と冷たい返事。どうも日本人というのがよくないらしい。誘拐などの危険が多いため、許可できないという。ここはいったんあきらめ、近くのビザ発給所で話を聞いてみる事にした。するとそこではビザ発給だけで1500Bかかるという(タイ人は100B)。今回は1〜2時間ぐらいしか滞在できないので、ちょっと遊びで行くには高すぎる。イミグレの職員にやめるよう勧められたこともあるし、残念ではあるが今回はあきらめる事にした。しかし、ラオスといえばぜひとも行って見たい国の一つ。いつか機会があれば行こう、メコン川をはさんで見えるラオスの町並みを眺めながら、そう願った。


対岸のラオスの町並み

 食事の後は、ワット・ポー・チャイとインド・チャイナ市場を巡った。ワット・ポー・チャイはイーさんが信奉しているお寺で、多くの人で賑わっていた。寺に来たからには、祈らずにはいられない。3回礼拝を繰り返した後、さっき祈った旅の安全と、その他諸々を祈った。インド・チャイナ市場は、地域の人たちの生活用品と、民芸品を売っている。長さ200mほどの市場だ。中央付近にはメコン川の展望台もある。そのうちの一軒で、もち米を入れる籠を売っていたので、購入した。

メコン川(インド・チャイナ市場展望台より)

 ひととおりノーンカーイ観光も済んだので、ウドンタニに戻る。夕食は例のステーキショップで取る事にした。帰る途中、スーパーに寄って果物を買った。日本で見ない珍しい果物が多い。タマリンとプットサを買ったが、驚くほど安い。改めて自然の恵み豊かな国だと実感できる。
 ステーキショップにはダーさんとオーさんが店を開いていた。店にはなじみらしい客が数人いた。みんなとワーイで挨拶をしてから、席に着く。
 それにしても、改めて考えるとステーキショップとは珍しい。タイでは牛肉はほとんど食べられることはない。そこにステーキショップとはなかなか面白いところに目をつけたんじゃないだろうか。そう思ってイーさんに聞いてみたところ、

  「ステーキは料理するのが簡単だから」

という、予想外の、気の抜けるような答えが返ってきた。う〜ん、それも一理あるけど、それだけだとなんだか淋しい。ここは一つ、マーケティング的な見地から、オンリーワンを狙ってみました、というのはどうか。深読みしすぎか。日本人的発想か。
 さっき買った果物を食べていると、ステーキが運ばれてきた。ステーキ定食35B。安い。味のほうもそこそこいける。プロの料理ではないが、日本でいう定食屋とか、家庭の料理とか、そういう雰囲気だ。店の冷蔵庫にAJINOMOTOが販売している「鮮茶」という名の緑茶ペットボトルがあったので、飲ませてもらった。昨日のペットボトルと違って今日のは日本の会社が出しているものだけに、その味に期待が持てる。早速飲んでみると・・・AJINOMOTOよ、おまえもか! 昨日のものより若干薄いものの、甘い。やはりこれがタイにおけるスタンダードなのだ。郷にいれば郷に従え。その国に合った味付けをすることには、僕は大賛成だ。せっかく世界は広いのだから、多様性は豊富なほうがいい。
 そのうち、ダーさんもオーさんも店の仕事を終えて、自分の夕食を作り、それをテーブルに運んできた。やっぱり食事は大勢で食べるのが楽しい。周りでは何人かのお客とその子供達がまどろんでいる。ステーキハウスの隣りにあるテニスコートでテニスを教えているおじさんもテニスを終えて入ってきた。このおじさんはとても変わった人で、とにかく冗談を言うのが好きだ。そして、絶え間なく喋る。とにかくパワフルだ。
 食事の後、このおじさんとイーさん、オーさん、ダーさんで飲みに行った。ここでもおじさんは絶好調。おじさんとはおたがい片言の英語で話をしていたが、仮に共通の言語がなくても、意味は通じただろう。楽しい酒を飲みながら、2日目の夜はふけていったのだった。

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